解決方法が明らかな問題に取り組むのは得意だけれど、解決方法が分からない問題に取り組むのは苦手。新しい問題を発見することができない。
社員さんたちの印象がこのようなものだとしたら、それは自社の文化に原因があるのかもしれません。
「優秀さ」の定義を誰かが決めつけていたり、優秀に振る舞わなくてはならないという雰囲気ができていたりすると、社員さんは失敗のない確実な仕事をしようとして、自由な発想を止めてしまったり、新しいことに挑戦するのはやめておこうと考えるようになってしまうかもしれません。
社会学者のマートンは官僚制の逆機能として「訓練された無能力」を挙げています。これは、規則や手続きなどを重んじて正しく仕事をするように鍛えられた結果、柔軟な発想で物事を考えられなくなったり、仕事をクリエイティブな楽しいものとして捉えられなくなってしまうことを指しています。よく「大企業病」という言葉が聞かれますが、同じような現象かもしれません。
このような場合、結果として、これまでと同じ仕事はできるけれど、新しい価値を生み出すことができない組織になってしまいます。
もしかしたら自社の社員たちのなかにも「訓練された無能力」が生まれてしまっているかもしれないと感じていても、どこから手をつければ良いのか分からないと考えている経営層、人事ご担当者の方々は多いのではないでしょうか。
不透明で変化のスピードが速い現代社会においては、従来のモデルに沿って考えるという方法では通用しないということがよくあります。
新しいものを生み出すために、社員の問題発見力を高めるために、以下のようなことから始めてみてはどうでしょうか。
決められた正しい方法で仕事をすることに慣れている場合、思考習慣が演繹的なものに偏っている可能性があります。一度、思考習慣を見直し、これまでとは異なる思考方法を鍛えることに取り組んでみてはどうでしょうか。
【演繹法】(Deduction)
演繹法は数学的な推論の方法と言われ、得られる結論は必ず正しいものとなります。
なんらかの法則があり、その法則に得られた情報を当てはめて考えるという方法です。
決められた正しい方法で仕事をすることを鍛えられてきた場合、正しい法則に仕事をあてはめるという思考になるため、演繹的な思考が鍛えられます。
【演繹法の例】
私立A校は男子校で、女性の入学を認めていない。(法則)
由美子さんは女性である。(情報)
↓
由美子さんは私立A校には入学できない。(結論)
演繹的な思考は論理的であり、従来の仕事をこなしていく上では大変有効です。社内で使われてきたフレームワークやモデルに当てはめて考える方法なども演繹的な思考法ですが、不透明な時代においては、従来のモデルが通用しないことがよくあります。新しいものの見方をしたり、まだよく分からない問題を発見する際には、他の思考法も鍛えておくようにしたほうが良いでしょう。
【帰納法】(Induction)
帰納法はさまざまな情報から法則を見出すという推論法です。自然科学の思考方法とも言われます。得られる結論は必ず正しいものとは限りません。
【帰納法の例】
都内のコンビニAでは、最近Xという商品がよく売れている。(情報)
都内のコンビニBでは、最近Xという商品がよく売れている。(情報)
都内のコンビニCでは、最近Xという商品がよく売れている。(情報)
↓
都内のコンビニ全般では、最近Xという商品がよく売れているのかもしれない。(結論)
上記の例では、ABCという3ヶ所のコンビニでXという商品がよく売れているという情報から、都内のコンビニ全般で、Xという商品がよく売れていると結論づけていますが、他のコンビニの状況を調べた場合には他の情報が得られ、結論が変わってくるかもしれません。また、この状況が都内だけのものなのか、他の地域にも当てはまることなのかなどについても、もう少し調べてみる必要があるでしょう。共通点に着目し帰納法的に考えることは、さまざまなデータから何かを発見する際に役立ちます。判断を誤らないためにも、正しく帰納法を使えるような思考習慣を身につけておくことも大切でしょう。
【仮説形成】(Abduction)
仮説形成は、得られた情報を合わせて考えることで「おそらくこういうことが起きているだろう」と仮説を考える方法です。帰納法が法則を見出そうとするのに対し、仮説形成では、法則ではなく起きている現象などを見出そうとします。医者や探偵の思考法とも言われますが、ビジネスの現場においてもとても重要な思考法です。
たとえば、営業担当者は仮説形成的な思考を働かせる必要があります。お客様から得られるさまざまな情報から「このような状況であれば、おそらくこういうことが必要なのではないか」とお客様がまだ気づいていないニーズを見出し提案する力が求められるでしょう。
新しいものを生み出そうとする際には「自社の常識は一般には通用しないのかもしれない」と考えてみる必要もあるでしょう。
自文化中心主義でものごとを見てしまうと、社会で起きていることを正しく把握し損ねることがあります。
外部の視点を取り入れたり、これまで当たり前だと考えていたことを捨ててみることで、新しいものが見出せることもあります。越境学習の考え方を取り入れることも有効でしょう。
社員の思考力を鍛えたいと思っても、どうすれば良いのかわからないということがあるでしょう。一つの方法として、振り返りの習慣をつけることをおすすめします。
・日報、週報などを書き、自分の仕事を振り返ることで考え学びに繋げてもらう。
・面談やレビューの場でマネジャーがリフレクティブな質問をし、チームメンバーに考えてもらう場づくりをする。
こうした振り返りの場では「全体を見る」ことを大切にすると良いでしょう。全体を見ることでものごとを構造的に見る習慣が身に付きます。
【ゲシュタルト】
左の図を見ると、中央に白い四角が見えるのではないでしょうか。しかし、この図を部分的に細かく見るようにすると白い四角は見えません。
この図から「全体を見た時にだけわかることがある」ことに気づくことができます。
ゲシュタルトとは、ドイツ語で「形態」を意味する言葉ですが、「全体像」といった意味で使われます。「全体は部分の総和とは別の意味を持つ」というのがゲシュタルトという言葉の本質的な意味です。
たとえば、お客様から得られたさまざまな情報からお客様のニーズを見出そうとする際にも、情報の全体を見て構造化を意識し、仮説形成的な思考を働かせるようにすると良いでしょう。
振り返りの習慣を組織に根付かせるためには、マネジャーの質問力を高めることが有効です。
質問はリフレクションを誘発し、考えることを促します。ただし、誘導的な質問では上手くいきません。質問力はトレーニングで高められるものです。リフレクティブな質問力を鍛えるためにはアクションラーニングも役にたつでしょう。
マインドマップは全体を一目で見渡せ統合的な思考を促すため、全体の構造や本質を見出しやすい思考ツールです。思考についての理解を踏まえた上で、思考ツールを学び、使うことをおすすめします。
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